【完】幸せをくれたあなたに。
止まっていた足をまた進め、人気のない階段で私は屋上へと向かう。
ねえ、知ってるよ?
藍那が可愛いってこと。
多分藍那は学校1可愛いんだと思う。
藍那が初め、あんなふうに誰とも話せなかったのは、
可愛いからって理由でイジメられてたんだと思う。
人見知りなんかでもない。
ただ、恐かったんだと思う。
廊下を通る時とか、聞こえてくる声は
「与沢ってさ、可愛いよな」
とか、
「俺与沢みたいな、ああいうのタイプだわ」
とか、そういう声。
藍那が襲われそうになったあの日も、男子たちはわかってた。
だからこそ、少し怯えた、辛い顔をみんなしてたんだと思う。
でもね?
なんで、よりによって、松井くんなの?
どうして、友達と同じ人を好きになっちゃうんだろ……。
こうなることだけは、絶対に嫌で、
ずっと恐れていたことなのに……。