【完】幸せをくれたあなたに。
「与沢さん。ごめん遅くなった」
暗くなった廊下に、1つだけ明かりのついた教室。
そこに藍那は、1人席に座っていた。
「よかった! もう戻ってこないかと思ったよ」
さっきまでシーンとしてた教室から、藍那の嬉しそうな声が聞こえた。
「三浦さんを探してたんだ」
松井くんのその言葉で、藍那は私へと視線を向けた。
まるで、今気がついたかのように……。
「……あれ?琴メガネは?」
そう聞いてくるけど、藍那は不安そうな顔をしている。
「えっと……、なくしちゃって」
「そっか」
藍那は少し視線を外して、そこをジィーっと見つめて悲しい表情をする。
見つめていた先は、私の肩に置かれた、松井くんの手だった……。