【完】幸せをくれたあなたに。




「あっ……。私、先帰るね」


「え、三浦さん?」


笑いたくないけれど、作り笑いをして逃げるように先を行く。

明るい教室から離れていく度、暗いけれどそれでもなんとなくの道で早足で歩く。


薄っすらと見えた階段があった。

少しずつ近づき、降りようとすると


「きゃあっ!」

まさかの足が滑った。


やばいっ!

そう思って目をぎゅっと瞑った。



あれ……?

「見えてないくせに、無理すんなよっ!」


上から聞こえたのは、松井くんの怒った声で……。

腕を引っ張って助けてくれたんだ。


「ごめ……なさい」

「はあ……もう。危機一髪だよ」


最近の私、変だ。


逃げてばかりで、結局は松井くんにいつも迷惑かけてる……。


それにしても、松井くんのあんな怒鳴り声。


初めて聞いた……。




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