【完】幸せをくれたあなたに。
それから藍那と、松井くんと3人で帰ることになった。
気まずい……。
藍那は俯いたままで、誰も言葉を発しようとはしない。
そのまま、ずっと無言のままで家に着いてしまった。
──ガチャ
バタン。
部屋に入っては、ベッドへそのまま倒れこむ。
「はあ……」
なんだか、複雑。
藍那が松井くんを好きだってわかってるくせに……。
『見えてないくせに、無理すんなよっ!』
「……っ」
なんで、いつもいつも松井くんの声は、こんなにも懐かしく感じてしまうのだろう。
なんで、こんなに……私の心を動かしてしまうのだろう……。
こんなに気にして、
まるで、それは“あの人”に対する気持ちのようで──…。
私は今までの行動が鈍すぎた。
もっと、早く気がつくべきだったのに……。