【完】幸せをくれたあなたに。
「初めまして。今日このクラスに転入してきた、“藤乃麻紀”(フジノ マキ)と申します。みなさん仲良くしてください」
ニコっと作り笑顔でも、しているかのようなウソっぽい笑顔で、黒板の前に立つ、“藤乃麻紀”
先生が話を進める中、彼女はあたりを見回した。
そんな彼女の行動を目にしていた私に、パチッと目が合ってしまった。
──ドクンっ……
さっきとは違う悪魔のような、そんな笑み。
髪の色も、髪の長さも違う……。
なのに、なんで…っ。
藤乃麻紀──……。
私の大っ嫌いな名前。
「それじゃあ、席は──……与沢の隣になるか」
藍那の隣の席を眺める先生。
その先をなにやら、不満そうに眺める彼女。
けど、
「はあーいっ」
高い声が教室に響き渡る。
席に向かう彼女は、わざとらしく私と松井くんのいる通路を通り、こちらへ来る。
──ドクンっ……
──ドクンっ……
近づいてくる度に、心が彼女を恐れる。
私は目線を下に向け、目を合わせないようにした。