【完】幸せをくれたあなたに。
なのに……。
「あっれえ? もしかして……琴?」
止まった足。
頭上から、気味の悪い声が聞こえる。
わざとらしく私の名前を呼ぶ。
もちろん、その声の主は“藤乃麻紀”でしかなくて……。
でも……。
1番信じられなかったのは、次に発した言葉だった。
「あれえ? 2人って同じ学校だったんだ?
琴と“ゆっきー”って……」
なに言ってるの?
……なにが?どういうこと?って頭の中は混乱していた。
だけど……彼女は気づいたら、松井くんのメガネに手を伸ばしていた。
なに……?
なにするの……?
その時までは、不思議に思っていたけれど、
「これ、“ゆっきー”だよね?」
あり得ないと思った。
だって……
だってね。
その名前は、外されたメガネの奥の顔は、全てあの日の君だったから──……。