【完】幸せをくれたあなたに。
明かされていく真実
過去
───あれは、忘れもしない中2の頃……。
「おい、琴。また転けたのかよ」
突然転けた私に、ハハっと笑う雪くん。
「うるさいなあ……。なんか一瞬見えづらくなるんだよ……」
転けた私に、手を差し伸べてくれる男の子。
それが雪くん。
私は、雪くんなんて呼んでるけど、本当の名前は、雪村冬弥(ユキムラ トウヤ)
男女関係なく人気者の彼は、みんなから“ゆっきー”と呼ぶ。
だけど、私はあだ名で呼ぶのが恥ずかしくて“雪くん”と呼んだ。
内面、凄く優しくて思いやりのある男の子だけれど、見た目は一言で言うと……チャラい。
少し片目が隠れるくらいの前髪に、首あたりに少し見える毛先。
目立つ金髪に、耳には片方に3、4個のピアス。
そのくせ、笑うと誰もがキュンときてしまう可愛い笑顔のギャップがある。
雪くんは、私のことを“琴”と名前で呼んでくれる。
それは、凄く嬉しいことなのだけれど……。
呼ばれる度に反応してしまうこの胸の高鳴りが、どうも落ち着かない。
だって……この人が、私の好きな人だから。
私と雪くん。
そして、もう1人……。
「んもう! 遅いよー」
拗ねたように話す高い声。
染めた茶髪の長いストレート髪。
私の唯一の親友の、“藤乃 麻紀”の3人は毎日一緒に過ごす仲だった。