【完】幸せをくれたあなたに。
──コンコン
部屋のドアをノックする音が聞こえる。
お母さんしかいない。
お父さんは、癌で亡くなっちゃったから……。
「琴? ごめんなさいね……」
ドアの向こうから、お母さんの悲しい声が聞こえた。
「どうして……お母さんが謝るの……?」
「私が……こんなふうに育ててしまったんだわよね……」
違うよ……。
それは、違う。
誰のせいとか、そんなんじゃない。
「……私、大丈夫だよ……?」
ほんとは、大丈夫なんかじゃない。
でも、とりあえず大丈夫って言わなきゃ。
お母さんは、そんな私に気づいたのか、なにも言わなくなってリビングへと戻った。