【完】幸せをくれたあなたに。





──ガンっ!


……やばいと思った。


逃げようとしたその足は、見えにくい足元でなにかにぶつかった。


もちろん、その集団は私に集中した。


焦り始める周りだけど、それはたった1人を除いて……。


麻紀を見つめる私と、私を見つめる麻紀。


その瞬間、麻紀は焦るのではなく、ニヤりと口角を上げ、笑った。


ゾクリとした。


その場で固まる私に、麻紀が近づいてきた。



逃げなきゃ……。

早く、逃げなきゃ……。



そう思ってるのに、足は動かなくて、こっちへ向かってくる麻紀を見つめるだけ。


動け……。


早く、動いてよ……。


目の前で立ち止まる麻紀は、床に座ったままの私を上から見下ろした。



そして、言った。


「琴にね、ついてきてほしいところあるんだ」


いつもの話し方がこれだったのかもしれない。

だけど、これは恐怖でしかなかった。


従うしかなかったんだ……。






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