【完】幸せをくれたあなたに。
たまに、見かける麻紀と雪くん。
2人はまだ、仲良く一緒にいた。
付き合ってるんじゃないかと噂されるくらいだった。
ただ、耳障りなだけ。
時々感じる、雪くんの切なそうな視線と、嬉しそうな麻紀の視線。
早く。
早く逃げたい。
卒業式が終わったあと、みんなとは違う高校へ進学したはずなのに……。
気づかなかった。
隣の席に座る“松井冬弥”は、ずっと想っていた雪くんだと……。
でも、君には私のことなんて、なにも知らないまま……溺れていたね。
私の気持ちなんて、これっぽっちもわかってなかった。
貴方がいなかった間、私がなにされていたか知ってる?
知るはずもないよね……。
ずっと麻紀の言葉を信じ続けて、誰も私のことなんてわかってくれなかった。
もうそれでいいと思った。
早く忘れたいと……。
なのに、なんでまた貴方に出会ったのかな……?
──高校1年の夏、失ってしまった感情が、再び溢れはじめた……。