【完】幸せをくれたあなたに。
「きゃー! あれ本当に松井!?」
「うっそ! マジかっこいいんだけど!」
「たまんな〜いっ!」
昨日に続き、今日も騒がしかった。
……いや、昨日より騒がしい。
私は周りの声に、反応せずにはいられなかった。
だって、“松井”くんの名前があったから。
高い身長の彼は、通れないくらい女子に囲まれていた。
彼の姿を見た時、ひどく驚いた。
だって、彼の真っ黒だった髪はあの頃のように、金色に染まった金髪だったから。
長かった前髪も切られ、少し片目が隠された状態。
耳には、片方に3、4個のピアス。
……まるで、あの頃に戻ったみたいだ。
だけど、変わったことといえば、冷たくなった瞳。
笑顔なんて1つもなくて、彼の瞳には一体なにが映っているのだろうか……。
隣で雪くんの腕を組む、麻紀の姿。
この日は、とてつもなく騒ぎが続いていた。
先生は雪くんの姿を見ては、驚き
「本当に松井か!?」
そう言われているのを目にしたのは、これで一体何回目だろう。
女子たちは、一斉に雪くんのほうへと群がってきた。
質問されても、どこか違う方を見てなにも答えない雪くん。
たまに視線を感じるけれど、授業に集中しているフリをして、必死にノートをとった。