【完】幸せをくれたあなたに。
「あれ?」
ドアの方まで行ったはずの松井くんは、さっき話しかけてきた声より低くなっていた。
なにかあったのだろうか。
「なにかあったの?」
思い切って、聞いてみた。
すると
「……鍵が閉まってる。閉じ込められた」
確かに彼はそう答えた。
ウソ、でしょ……?
ああ。でもこれは、
「ごめん。私のせいだ」
「三浦さん、なにもしてないでしょ?」
「私、こんなダサい女だし」
間違いない。
私のことをいじめてくる奴ら以外いない。
すると、松井くんがこっちにくる足音が聞こえた。
近づいてくるのに、どこにいるかもわからない。
だけど、なぜだろう。
声を聞くだけで安心する。
「俺だってダサい男だけど?」
そう言った松井くんは、少しフッと笑った気がした。