【完】幸せをくれたあなたに。
雪くんじゃ……ない?
雪くん、じゃ……ない……?
突然、数cmもないくらいの近くにいた雪くんが離れていった。
力強く押さえていた腕も、力が弱くなっていた。
そして、私の顔を見て驚いた顔をしている。
「……ごめん。泣くなよ……」
自分ではわかっていなかった。
泣いていたことに……。
涙を拭おうとしてか、近づいてきた雪くんの右手。
「っ……だ」
「え?」
「いや……っだ!!」
気づいたら私は、そう叫んでいた。
雪くんって、ちゃんとわかってるのに……。
私の頭の中には、あの日の男たちを思い出して、雪くんが違う人に見えて仕方ない。
怖い……。
雪くんは悲しそうな顔をした。
「……かえ、る」
ドンっと雪くんを突き放して、雪くんの家を飛び出した。