【完】幸せをくれたあなたに。
失った言葉
私は、マンションから急いで出た。
当たり前のように、外は真っ暗で。
当たり前のように、つまずいた。
「うっ……ああっ……!!」
その瞬間、涙が一気に溢れ出してきた。
周りなんて気にせず、私は大声で泣いた。
「……大丈夫ですか?」
人なんて全然通っていないくらい、静かだったのに私宛だろう、背後から声をかけられた。
ゆっくり振り返る。
だけど、見えない人影。
「えっ……みーちゃん?」
どうして、よりによって今知ってる人に会ってしまうんだろ。
「はる、き……くん?」
「やっぱり、みーちゃんだ。……どうして泣いてるの?」
「…………」
遥生くんに、そう聞かれたけれど私は答える気には、なれなかった。
「みーちゃん、とりあえず立と?」
そう言って、見えない私の腕に、遥生くんが触れた。
──ビクッ
私は驚いて、遥生くんの手を振り払ってしまった。
「……あ、ごめん」
謝って、遥生くんが、もう一度私を立たせてくれた。
「ねえ、遥生くん」
「どうしたの?」
「1つだけ確認してもいい……?」
「あ、うん」
「……あなたは、本当に遥生くん?」
なにも見えない私には怖くて、声だけじゃ信用できなくなってきて……。
きっと、遥生くんは変に思うだろう。
けど、確認したい。
「……えっ。あ、えっと、そうだよ?」
当然のように、遥生くんの頭の中には“ハテナ”が思い浮かぶだろう。
だけど、よかった。
これはきっと、遥生くん。
「あっ! そうだ、ごめん。みーちゃん」
遥生くんは突然、なにかを思い出したように謝ってきた。
「……?」