【完】幸せをくれたあなたに。
「でも、その人はもう変わってしまった……」
そう。
彼は変わってしまった。
「冷たい瞳をしていて……。まるでなにも映っていないみたいに……」
黙って聞いてくれる遥生くんに、何度も言葉を続けた。
「怖かった……。あんなに力が強いってことも、今まで知らなかった」
力強く私の腕を押さえつけた、その力は痛くて、怖くて、ただ身体が震えた……。
まだ、ジンジンと熱を持ってるその腕を、軽く触った。
私が泣いた時、止めることのできたアナタには、まだ優しさがあるんだよね……?
その時、黙っていた遥生くんが私に言った。
「みーちゃんは、その人のこと……好きなの?」
好き?
「今は、よくわからない……」
だけど、
「私はきっと、また彼を好きになる気がするの……」
こんなこという私はバカ?
麻紀のことだって、雪くんは知らないんだから話してもいい。
なんて思ってる自分がいたりして。
だけど、そう思っても怖い自分もいて。
今の私の気持ちは、わからないまま。
それでも、また彼を好きになる気がする。
“おかえり”ってそう優しく言ってくれる彼がいるんじゃないかって。
「……じゃ………め?」
「え?」
「俺じゃ……だめ?」