【完】幸せをくれたあなたに。
胸ぐらを掴まれていた男は、俺が力が弱くなっている間に、バっと離れた。
そして、みんな一気にトイレから逃げていった。
「ははっ……なにやってんだ俺」
最低だ……。
琴は、それでも戦い続けてきたんだよな……。
麻紀、どういうことなんだよ。
なんでこんなことしたんだよ……。
わけ、わかんねぇよ。
予鈴がなっても、俺はその場から動けなかった。
戻ってきたのは、3限目の後。
「あ、もう〜! ゆっきーったらどこ行ってたの? 授業にも出てないし、心配したんだよ?」
近づいてきたのは、紛れもなく麻紀で。
「お前……なにがしたいんだよ」
苛立ちを覚えた俺は、初めて麻紀に向かって「お前」と呼んだ。
「ゆっきー……?」
「今まで、ウソついてたのか……? なんで、琴にあんなことしたんだよっ!!」
ほんとは、ウソだって、信じたい。
頼むから、そう言ってほしい。
けど……
琴の名前を出した途端、麻紀の顔色が変わった。
冷たく、いつもと違う表情に。
「……あははっ。仕方ないでしょ? 邪魔だったもの」
「ふざけんなよ」
そんなことで、琴はあんな……。
あんなひどい目に遭ったのかよ……。
「琴が、なにしたって言うんだよ」
「アイツが悪いんだよ、全部。私のモノを奪おうとするから……」
狂ったような瞳。
わけわかんねぇよ……。