【完】幸せをくれたあなたに。
「それでさ、俺与沢といる時に琴って間違えて呼んだことがあるんだ」
「え……?」
藍那の前で……?
「それで、与沢に少し口止めさせてもらって、文化祭前の放課後……」
────
『ま、松井くん!』
『?』
『琴と、どんな関係なの!?』
『いや、別に普通のクラスメイトだよ』
『ウソ。なら、どうしてこの前、琴って呼んでたの!?』
『っ……今は言えない……』
『え……? どうして』
『頼む。あいつには言うな』
──────………
……じゃあ、まさかこの場面って私が担任に頼まれて、雪くんを探しに行った時見たものなの……?
私、なにもかも勘違いしてたんだ……。
「なあ、琴」
不意に呼ばれた、声からでも伝わる真剣な雪くんの声。
「俺、明日ケジメつけてくるから」
「…………」
「だから、待っててくれないか……?」
そう言った雪くんに、私は
「うんっ、待ってるよ」
私も明日、ケジメつけなきゃ……。
その日は、雪くんに送ってもらい、すぐに眠った。