【完】幸せをくれたあなたに。
「……やっと1つ、琴のことがわかったよ」
藍那は、怒ることも、恨むことも、なにもなく。
ただ、笑顔で私にそう言った。
「琴は、私にいつも隠してばっかりで、なにも言ってくれなかった。けど、やっと1つわかったよ」
そう言って、私に向かって
“ありがとう”
そしてまた微笑んだ。
と、その時
「もういいわよっ!! 面倒くさい。でも、私は絶対謝らないから!!」
そう吐き捨て、ドアに向かおうとしたのか、やっと私たちに気づいた麻紀。
その後ろにいた雪くんも、こちらを見た。
「……っ、なに? 盗み聞き?」
「ちが……っ」
「結果がわかって、私を笑いたい?」
「だから、そんなつもりは……っ」
「ウザい」
麻紀は、大きな足音をたて、大きな音で屋上のドアを閉めた。
「琴……」
そっと近づいてきた雪くん。
そして、
「ごめんな」
「どうして謝るの? むしろ、ありがとうだよ」
「えっと……私もいるんだけどなあ」
気まずそうに話に入ってきた藍那。
「へっ……!? いや、忘れてなんかっ」
「あっやし〜……。ま、いいや。でも1つだけ伝えさせて」
「……?」
「……松井くんに」
え。
「え、俺?」
「そう」
藍那は大きく息を吸って、雪くんに向かって言った。