【完】幸せをくれたあなたに。




「三浦さん、ここに毛布が1つだけあったんだ。今夜は寒いしこれ使って」

さっきから、ゴソゴソとしていた松井くんがこっちに近づいてくる。


「いい。松井くんが使いなよ」

「まあまあ、いいから。はい。これ」


“はい。これ”と言われても、見えづらくてどう受け取ったらいいのかわからない。


とりあえず、声のする方に手を伸ばして左右に手を探るように揺らす。


それに接したのか、松井くんは「あ、ごめん」と言って更に近づいてくる。



ん……?

後ろに行った?


そう思った瞬間。

一瞬身体がビクリと跳ね上がった。


松井くんが、毛布を肩に掛けたからだ。


「んじゃ、おやすみ」

毛布を掛けとくだけ掛けて、スタスタと私から距離を置いた。


きっと、私に気を遣ってくれてるんだ……。

それに、毛布ないのに寒そうだし。

自分で使えばいいのに、どうして私に貸すの?



そこには、疑問だらけの私がいた。





< 20 / 204 >

この作品をシェア

pagetop