【完】幸せをくれたあなたに。
私は唇を噛み締めて、震える足で松井くんの隣に近づいた。
松井くんは多分反対側を向いて寝ている。
震える身体。
だけど、大丈夫だよ……。
まだ、松井くんのことをなにも知らない私だけど、ここまで気を遣わせるなんて私も嫌だから。
見えづらいから、とりあえず適当に半分掛けてみた。
その瞬間、松井くんがこっちを向いた。
近くて体勢を変えたのがうっすら見えた。
松井くんがこっちを向いた時、ゾクッとした。
驚いて固まっていると、松井くんは「ごめん」と一言いって、向きを戻した。
そして、
「ありがとう」
そんな松井くんの声が私には、暖かく優しい声に聞こえたんだ──…‥。