【完】幸せをくれたあなたに。
すると、突然すぐ近くの《702》の人が出てきた。
松井くんかな……
なんて思いながら。
だけど、出てきた人は、松井くんでもなく大量のゴミ袋を持ったおばさんだった。
あ、そうだ。
聞いてみたら、わかるかな。
「あの、すみません」
「はいはい?」
おばさんは、私に視線を向けて大きく目を開けた。
「ここに松井さんっていう方いますか?」
「ああ!松井さん家なら、《708》号室だよ」
「あ、ありがとうございます!」
お礼を言い、後ろを向こうとすると、おばさんが「あ、ちょっと待って」と口を開いた。
私はまた、おばさんの方へと向きを変えた。
「どうしたんですか?」
私がそう聞くと、おばさんは眉毛を下げ、困った表情をした。
「いやあ、松井さん家のお宅いつもいつも大きな物音がするのよ。なにか知らない?」
「え?」