【完】幸せをくれたあなたに。
「あ、松井くん。もうここで大丈夫」
家の近くに着いた頃、私は足を止めた。
「いいよ、ちゃんと家まで送ってく」
気を遣っているのか、送ろうとしてくれる松井くん。
「ううん。ほんとにいいの。すぐ近くだし」
それに、もしこんなとこお母さんに見られたら、きっと心配するだろうし。
「そっか。わかった。気をつけてね」
「うん。ありがとう」
お礼を言った後、松井くんはクルりと向きを変え、来た道を帰って行った。
松井くんの姿が見えなくなるまで、見送ろうとした。
だけど、暗くて姿なんて見えなくなっていた。
私は急いで家に帰って行った。