【完】幸せをくれたあなたに。




「三浦さん! いたよ」


突然、中から松井くんの声がした。


松井くんは、藍那の手を引っ張って、「先に与沢さんをっ!」と言って外へと出した。


「あ、うん。わかった!」


私はとりあえず、藍那を人気のないところへ連れて行き、2人きりになった。


「藍那、大丈夫? ……じゃない、よね」


さっきから、浮かない顔ばかりする藍那。


私は、藍那の背中をさすろうとしたけれど、その手を止めた。

きっと藍那は今、怯えているから。


さっき松井くんに腕を引っ張っられた時、身体が震え反応していたから。


いくら私だからといって、触れたら反応してしまうだろう。


とりあえず、今日はもう早退させたほうがいいな。


「琴」

下を向いたまま、藍那が私を呼んだ。




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