【完】幸せをくれたあなたに。
「──じゃあ、ここを三浦さんに読んでもらおうかしら」
「は、はいっ」
突然名前を呼ばれ、勢いよく立ち上がった。
最初のうちに開いていた教科書を持った。
えー……と、どこ読むんだろ……
困っていると、
コンコンと隣から、机を叩く音が聞こえてきた。
不意にも、右隣りを見ると松井くんがノートの端に
“67ページの後ろから3行目”
と書いてあり、開いていた教科書の左ページを読んだ。
「はい、ありがとう」
そんな先生の声が聞こえたのは、凄く長く感じた。
「ふう……」
小さく息を漏らして、
「ありがとう」
前を向いたまま、松井くんに向けて言った。
ちゃんと顔を見てないけれど、なんだか松井くんが小さく微笑んでいる気がした。