この恋、きみ色に染めたなら
『と、トイレですよ、多分…。
HR始まる前にトイレに寄ったから……』
『お友達、言ってたけど?
教室飛び出してから戻ってきてないって』
そういえばHR始まる前に二回先輩が来たって凪が言ってた。
一回目は私と美術室に行くことになった時、二回目は…
『凪と話した後に戻ってきたんですよ』
先輩にそう言いながら、涙腺が緩んだのが自分でも分かった。
…だめだ、このまま先輩と話を続けていたら。
このまま先輩に見つめられていたら。
『……先輩、絵の続きを描きましょう…?』
それは完全に逃げたくて、口から出た言葉だった。
『お前がそんなに描いてほしいって思ってるなら、描いてやるよ』
先輩はそう言ってキャンバスを持ってきて、当たり前のように準備を始めた。