この恋、きみ色に染めたなら
けれど、
どんなに閉まってしまった扉を眺めていても先輩が開けてくれる訳でもない。
きっとどんなに待っていても先輩は私が居なくなるまで開けてはくれない、そう思った。
静かにその場を離れ、一人で廊下を歩いていく。
もちろん、先輩が追いかけてきてくれる訳でもない。
『漫画やドラマなら…きっと来てくれるんだけどな…』
そう。
漫画やドラマなら、“俺はお前が好き”とか言いながら追いかけてきてくれる…
なんで私は漫画やドラマの主人公じゃないんだろう。
もし私が漫画やドラマの主人公なら、もう先輩といい関係になれるかもしれないのに。
なんで現実の恋はこうも上手くいかないんだろう…
『先輩……早く忘れてよ…』
『その人と過ごした時間も思い出も全部全部……消しちゃってよ……』
言いながら、頬を流れる涙-…
なんて私は傲慢なんだろう。
なんて私は最低なんだろう。
先輩を好きになればなるほど、先輩に私を見て欲しくてたまらなくて。
先輩の気持ちなんかよりも自分の気持ちを大切にしようとする自分に気付かされる。
『……先輩が好きなだけ…なのに……。
好きだから…先輩の気持ちが変わるまで先輩の今の気持ちを大事にしてあげればいいのに……なんで、私はできないの……?』