この恋、きみ色に染めたなら

*先輩の過去を知って






『あの……どうして?』




『女の勘?』


店主さんはにこやかに微笑み、カウンターにアイスティーを出す。




『話をするなら、この席でもいいよね?』


私はその問い掛けに首を縦に振り、アイスティーの出されている場所の椅子に腰掛けた。



『今、オーブンのスイッチ入れてくるから、アイスティーでも飲んでてね』


店主さんが離れ、この間気になった棚に飾られてる写真に目がいく。


立ち上がり、よく目を凝らして見てみる。



でもハッキリと顔が見えなくて、私は体を前に前にと突き出す。





『この写真、気になる?』


オーブンのスイッチを入れた店主さんは戻ってくるなり、棚に飾られていた写真立てを取り、身を突き出している私に差し出す。




そこに写っている、私達と同じ制服を着ているのは店主さん。

そして学ランを着ているのは、まだ幼さの残る先輩だった-…





『肇と私、そして私の妹は幼なじみなの』


店主さんの言葉に、だから店主さんは先輩のことをよくご存知なんだと理解する。


そしてもう一人の女の子…

それは、美術準備室で見た、あの絵の人、だった-…





『この女の子……店主さんの妹さん、なんですか?』



『そう、今はもういないんだけどね…』


店主さんは寂しそうに微笑む。


それはきっと、事故で亡くなったから-…。




『交通事故で、病院に運ばれた時にはもう…』




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