この恋、きみ色に染めたなら
『……ごめんね……』
私の涙に気がついた店主さんは、私の前にティッシュ箱を置き、そう謝る。
『………いえ………』
私は一枚ティッシュを取り出し、目から溢れる粒を拭う。
店主さんも同じく、ティッシュで目から溢れる粒を拭う。
『肇のことが好きな子に、こんな話をしても辛くさせるだけだよね…ごめんね…』
そう言って、微笑むも、目からは正直に涙が流れていて。
『……いえ。
先輩に忘れられない人がいるって、本当は好きな人がいるって知ってたから…』
どうしても忘れられない、
どうしても諦めることのできない、
そんな恋を未だ先輩がしてることは知ってるからー…
ただ、知りたかっただけ。
先輩が好きになった人がどういう人なのかって。
先輩が好きになった人みたくなれたら、先輩は私を見てくれるのかって。
けど、無理だと思った。
小さい頃から一緒で、想いを積み重ねてきた時間が長すぎる。
紗季さんの想いの強さも深さも、先輩の想いの強さも深さも、わたしなんかが到底敵う訳ない…