この恋、きみ色に染めたなら




『…話を聞けて良かったです。

 これで明日からは先輩の絵のモデルが出来そうです』




先輩には、

先輩の心には、

紗季さんがいる。





この事実は、その想いは、

私にはどうにも出来ない。







『私、先輩のこと大好きになる前に聞けて良かったです。

 本気で先輩に恋をしても叶わないって……そう、思う前で………』



そこまで言って、私の頬に涙が流れていくのに気がついた。







『……あれ……ごめんなさい……。

 先輩のこと、好きに……なりかけてたから……ちょっと涙が……』




好きになりかけてた、じゃない。


この胸の痛みは、この涙の訳は、

先輩のことが本気で好きだから。







『肇のこと、好きなんだね…』



店主さんの言葉に、余計に涙が溢れてくる。








『………ごめんなさい…。
 
 先輩は……大事な妹さんの好きな人なのに……。

 同じ人………』



 
涙で視界が滲んでいく中、店主さんは私の元に歩いてきて、そして私を優しく抱きしめてくれた。






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