この恋、きみ色に染めたなら
『紗季の葬儀の日、紗季の遺体を前にして、あの子が呟いたの。
“どうして今になって気付いたんだろう”って…。
ずっと隣にいた、これからもそれは変わらない、その考えが肇の本当の想いを見えないようにしていたのかもね。
紗季の頬に触れて“好きだったんだな、お前の事”って…』
店主さんの言葉に、先輩が初めて自分の想いに気が付いた時のことを想像してみる。
どれだけ、悲しかっただろう。
“好き”だと気付いたのは、その人が居なくなってしまった時で。
どれだけ辛かっただろう。
“好き”と言えずに、その人を失うことは。
どれだけ苦しんだんだろう。
“好き”の想いを未だ持ち続けている先輩は。
『肇はね……失うのが怖いんだと思うの。
紗季とのことがあったから、また好きになった人が自分の傍から突然居なくなってしまうんじゃないかって。
またその人を失ってから気付いたり、気持ちを言えないまま会えなくなってしまったら…きっと不安で人を好きにならないようにしてるんじゃないかな……』