この恋、きみ色に染めたなら
*先輩が好きだと思った
その後は店主さん、いや真理子さんお手製のケーキを頂いた。
お店に来た時は悩んで、苦しくて仕方なかった。
今でも確かにそう、けど沢山の不安の中に、先輩のことはどんなことがあっても好き、それだけは変わらない。
先輩が例え紗季さんを忘れられていなくてもいい、そのままの先輩が私は好き。
先輩に溢れる好き、私にはそれだけ。
そう思えたら、どうしようもなく先輩に会いたくなった。
『あの店主さん……今日は美味しいケーキに、先輩と紗季さんとのこと、本当に色々とありがとうございました!』
私は椅子から立ち上がり、その場で深々と頭を下げ、そうお礼を言った。
『紗希ちゃん、こちらこそケーキの試食ありがとう。
紗希ちゃんがあんまりにも美味しそうに食べてくれるから自信を持ってお客様に出せそうだわ。
本当にありがとうね。
それから私のことは真理子って呼んで?』
『真理子さん、本当にケーキ美味しかったです!
きっとお客さんも大満足してくれるケーキだと思います!
本当にありがとうございました』
『こちらこそ、ありがとうね。
そろそろ紗希ちゃんも帰らなきゃダメな時間だよね』
お店の壁に書けられた時計を見ると、既に夜の七時半を過ぎていた。
『もうこんな時間だったんだ…。
こんな時間じゃ……もう先輩残ってないかな……』
『紗希ちゃん、今から肇に会いにいくつもり?』
真理子さんは少し驚いた顔を見せる。
私はそんな真理子さんに笑みを見せる。