この恋、きみ色に染めたなら
『…は?つーかなんで紗希いんの?』
先輩は柳先生がもう一度、この部屋に来たと思ったのだろう。
呆気にとられた顔をしながら、私を見つめる。
『………先輩に、会いにきました……』
先輩の顔を見て、思わず本音がポロリと口から出る。
私の言葉に先輩は首を傾げ、そして困ったような顔で私に問いかける。
『明日でも絵の続きで会えると思うけど?』
先輩の問いかけの通り。
別に今でなくとも、明日の放課後には絵の続きで先輩と会える。
『今……今、先輩に会いたくて、先輩に会いに来ました…』
でもね、先輩。
私は今、あなたに会いたくて、必死で走ってきたの。
あなたに会いたくて、あなたの顔が見たくて、あなたに言いたいことがあって…
ここまで来たー…
『へー、紗希って俺に会いたいって気持ち、あったんだ?』
先輩はそう言って、美術準備室から完全に体を出し、そして静かにその扉を閉めた。
『………先輩。
私、先輩に……先輩に謝らないといけないことが、あります……』
そう、私はあなたに気持ちを伝える前に、
あなたとの約束を破ってしまったことも、あなたに話さないといけない。