この恋、きみ色に染めたなら
『紗希が俺に?』
その言葉の後、先輩の顔から笑みが消えたように見えた。
『…………はい。先輩にどうしても』
『例えば、この部屋に入ったとか?』
私の言葉を遮るかのように、先輩はそう言ったー…
“例えば、この部屋に入ったとか”
カマ、かけてるつもり、なのかな…?
それとも先輩は私がこの部屋に入ったこと、知ってる…?
『紗希は俺に絵を描いてもらいたい、そう言ったよな?
だからこの部屋には入ってない、そうも言った。
じゃーさー、これ、何?』
先輩はそう言って、有名なキャラクターと共に“Saki.N”と刺繍が入ったストラップを指でつまみ、私の視界に映るように見せてきた。
『………え……?』
確かそれは、凪と有名テーマパークに遊びに行った記念で作ったもの。
自分の名前の後に、相手の名前のイニシャルを入れて作った。
“二人の友情がいつまでも続きますように”って二人で願いを込めて作ったもの…
それがどうして先輩の手に……
『荷物を運ぶのを手伝った時、美術準備室のキャンバスの近くに落ちてた。
Sakiは紗希、お前のこと、もしお前が準備室に入ってなければこれは落ちてなかったはず…。
つまり、お前が入ったっていう証拠だと思うんだけど』
先輩の目、笑ってないー…
先輩の顔、こんなにも感情がないような顔になるんだー…
そう思ってしまうほど、先輩の顔に笑みも感情も、何もないー…