この恋、きみ色に染めたなら






もう、見たの。




もう、聞いたの。





私、知ってるんだよ?




先輩と紗季さんのこと…













『……先輩、紗季さんを知らないって本当ですか?』





私はユックリとその部屋に飾られたキャンバスの元に歩み寄り、そしてかけられた布の端を手で握った。







『本当に?本当に先輩が知らないなら…』





ーーシュル…



引っ張ったと同時に、そんな効果音と共に布が床に落ちていく。




そして現れた、一人の太陽のように輝く笑顔を見せる女の子ー…







『それなら先輩、この人は誰ですか?』









現れた女の子に先輩の目は釘づけになっていて…




その先輩の目に、私の心はズキッと痛む。











『紗季さん、ですよね?

 先輩の幼馴染で、先輩の好きな人……』









先輩の目を見れば分かる。


先輩がどれだけ紗季さんを好きだったか。


先輩が今でもどれだけ紗季さんを想っているか。




でも、その目を見ても、それでも先輩を見つめてしまう私は誰よりも先輩の気持ちが分かるー…














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