この恋、きみ色に染めたなら
『……紗希…?』
『先輩、私は先輩のことが好き。
先輩が紗季さんを想うように、私も先輩が好きだよ…?
先輩が紗季さんを忘れられないなら、それでいい…。
そのままの先輩でいい……だから私、先輩の傍にいても、いい…?』
先輩を抱きしめる力を強め、私は自分の意志を固める。
『何言ってんの…お前は…。
俺、今言ったばっかじゃん…?
俺は紗季じゃなきゃダメだって……なのになんでそんな奴にそういうことが言えんの…?』
『……好きだから。
どうしようもなく嘘つきで、未練がましくて、人の心をさっと掴んでいく、そんな先輩がどうしようもなく好きなんです、私…』
好きなんだ。
好きなんだよ、先輩。
『先輩、先輩がどうしても紗季さんを忘れられないなら…
私が紗季さんの代わりになるよ』
『私も紗季さんと同じ紗希。
先輩が紗季さんと会いたくなったら、私を紗季さんだと思って、名前を呼んでください。
先輩が紗季さんと過ごした時間を忘れられないというのなら、私を紗季さんだと思って、過ごしてください…』
『お前…本当にバカな女…。
浮気性の男に振られて、次に好きになったのが未練がましい男って…どんだけ男運のない女なんだよ…』
『……そうですね。
でも未練がましいってことは、それだけ一途に相手を想える証拠じゃないですか』
『そんな台詞、俺がお前を好きにでもなった時に吐けよ?』
『……じゃ、今、言っておいて良かったです』
『なんで?』
『先輩の心の中にいる紗季さんを越えることは私には無理だから。
だけど、私は生きてる……紗季さんよりも先輩を好きでいる自信はあります。
先輩を好きで居続ける自信もあります!』
先輩、好きだよ。
私はこれからも生きていく、その日々をあなただけ好きでいると誓います。