この恋、きみ色に染めたなら







『………ごめん…』





その言葉と共に、私の体は何か温かいものに包まれた。




その何かに気付くのに、時間はかからない。





先輩の腕の中に包まれて、私の頬は先輩の胸のところにあって…







『ごめんな。傷つけたい訳じゃない、けど結果的に傷つけてばっかで、ごめん』






初めて感じる、先輩の温かさ。



今は、今、この瞬間だけでも先輩は紗季さんじゃなくて、紗希のことを考えてくれているのかな…と、考えてしまう私…。









『傷ついてなんかないです。

 私がただ…先輩には想ってる人がいるのに、それでも諦められないだけだから…。

 紗季さんの代わりになるって私が言ったのに…代わりになりきれてなくて…ごめんなさい…』








先輩はいつも優しいー…




私が戸惑って足を踏み出せないでいると、いつも面倒くさそうに手を引いてくれた。




不器用で、おっかない優しさだけど、いつも優しかったよね。







でも、今はもっと優しいね…。




紗季さんの代わりを演じようとしてるから、かな…





それとも演じきれないのに演じようと必死な私があまりにも滑稽だから…




だから優しい言葉をかけたいと、そう思わせてしまっているのかな…?







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