この恋、きみ色に染めたなら





『なぁ…。なんで俺なの?』





先輩の問いかけに私は先輩の胸元から離れ、先輩の目を見る。










『アイツを忘れた日なんか一度もない。
 アイツを想い出にしたこともない…。

 俺、お前に特別に何かした?
 お前に好いてもらえるようなこと、なんかした?』







先輩も私をしっかりとその瞳に映してくれていて。


私の心臓はどんどん高鳴っていくー…










『恋をするのに特別な何かって必要なんですかね。

 気が付いたら一緒にいるとドキドキして、その人の笑った顔が見たいと思ったり、誰よりもその人を分かりたい、そう思ってるものなんじゃないですかね』









私はね、先輩ー…



先輩が私の名前を呼んでくれると、それだけで舞い上がってしまうんです。



先輩がくれる言葉はぶっきらぼうで、冷たい時もあるし、ムカつくことだってあるけど、それでも私はいつもドキドキしてしまうんです。



先輩が手を引いてくれると、そのまま永遠に離さないでほしいって、先輩の背中を見つめながら願ってしまうんです。







馬鹿、本当に馬鹿すぎるくらい、先輩のことを好きになってしまったんです。













『俺、お前に何かしたわけじゃない。

 これからだって何か出来る訳じゃない。

 それなのに、お前が俺の傍に居る理由って…』




『先輩に何かしてほしいって、願ってもいませんから、私。

 強いて言うなら、このまま先輩の迷惑じゃなければ、こうやって美術室で先輩と過ごしたい、それだけですよ、私の願いは。』








どうか先輩、私の願いが叶わないのなら、せめて叶わないのだと私が本気で諦められる日まで先輩の傍にいる我儘を許して下さいー…







それだけでいい。



それだけでいいからー…








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