この恋、きみ色に染めたなら
『もう帰れる?』
目の前に現れた先輩は私の顔を見つめ、そう問い掛ける。
すぐにその様子にクラス中がざわめき出す。
『……え、あの……』
美術室で待ち合わせ、では?
美術室で帰宅時間をずらしてから真理子さんのお店に行くのかな、とか思ってた…
でも、まるで約束していたかのような雰囲気は何故ですか…?
しばし先輩の目を見つめるだけで、私は茫然と立ち尽くす。
『紗希、いい加減、俺を理解して。
俺がトロいのが嫌いなの知ってるだろ?』
……えぇ、勿論ですとも。
勿論、先輩がトロいのが嫌なのは重々承知している事実ですよ?
だけど、なんで先輩が迎えに来るの?
『あ…あの……。
成田先輩、最近よく紗希の所に来ますけど……2人って、どんな関係なんですか…?』
私達に近い場所で会話を楽しんでいたグループの一人が先輩にそう問い掛けた。
……それは聞かないで。
好きな人の代役、だなんて皆の前で言われたくないよ……
『大事な奴に会いに来たの。なんか問題ある?』
先輩はしれーっと、そう答えた-…
私を始め、クラス中の息が止まった…。
『え、なんでお前までそんな顔してんの?』
目をパチパチ、口はパクパクさせている私を先輩は冷たい目で見つめ、そう問いかけてくる。
『お前までそんな顔すんな』
先輩はそう言って、私の頬を掴み、口を縦に開けるような、なんとも恥ずかしい顔にさせる。
『変な顔、早く支度しろよ』
先輩はニカッて微笑んで、その手を離した。