この恋、きみ色に染めたなら
『で、どっち?』
廊下に出るなり、先輩は私に尋ねる。
あ、昇降口の行き方か…
先輩も二年前はこのフロアーで勉強してたのに、もう忘れてる。
なんか面白い…
『あ、昇降口は左をちょっといったところにある階段を降りていくと早いですよ』
『何言ってんの、じゃなくて、小林の教室!』
……へ?
『今日、必要なんだろ、教科書!』
『………教科書……』
先輩、人を焦らせるくせに、ちゃんと凪との会話を聞いてたんだ…
『間抜けな顔はいいから、どっち?』
『…え……あ、二組……』
『二組ね』
先輩はそう言って、私のクラスの左に向かって足を動かした。
そして二組の教室の出入り口の近くにいた女の子に声をかけた。
『ね、このクラスに小林って男、いる?』
『え…………』
その子は一瞬、先輩を見つめてフリーズする。
そして数秒経ってから…
『きゃー!成田先輩よ!』
その声で周りの女子が先輩の元へと走り寄ってきて、あっという間に先輩は囲まれていた。