この恋、きみ色に染めたなら
探すのに時間がかかったのか、少し遅れて小林君は私の教科書を先輩に渡す。
『人の物、いつまでも借りてないで、さっさと返しに来いよ』
小林君は先輩の凄みのある言い方にへこへこと頭を下げていた。
『ほら、紗希』
先輩が動くと囲んでいた女子生徒も動き出す。
先輩が通ろうとしている道は開けてくれので、先輩はスタスタと歩いてきて、小林君から返ってきた教科書を私に差し出した。
『………あ、ありがとうございます……』
私の言葉と共に注がれる冷たい視線…
『ん、ほら、行くぞ』
先輩はそう言って、さも当たり前のように私の手を引いた。
『…え…!あ、あの…成田先輩、その子とはどういう関係ですか!?』
名前は把握できていないけど、隣のクラスの女の子が先輩の背中に問いかけた。
ほら、手なんか引くから……
だから、またそうやって誤解を受けて、こんな面倒くさい質問をされちゃうんだよ……
先輩はくるりと体を回転させ、私の背後にいる全員に向かって口を開いたー…
『俺の特別な子。
だから、もし紗希が傷つくようなことがあれば、うーん…みんな死んでもらうよ?』
言葉の後に、クスリと笑う声が聞こえた。
でも、先輩の怖いくらいの笑顔に、その場にいた全員の顔が凍りついたのは言うまでもない
…。