この恋、きみ色に染めたなら
『あの……!』
先輩が当たり前のように私の手を引き、そして三年の下駄箱まで連れてくるもんだから、私は慌てて先輩に呼びかけた。
だって、ここは三年生の下駄箱…
しかも今は放課後で、三年生の先輩方は帰宅するひとが多いんだよ!?
にも関わらず!誰かに会ったら…また冷たい視線を送られるの嫌だよ…
『何?』
振り向く先輩は、そう言うなり私の目を見つめる。
その射るような目で見られては言葉に詰まってしまう。
『あの……私、あっちなんで…』
私はそう言い、一年の下駄箱の方を指さす。
『だから?』
『だから…えっと、手を離してもらえると嬉しいです……』
そう言ったはずなのに、先輩は離すどころか、引いている方の手に力を入れてきた。
『あ……あの……』
『紗希が離してもいいなら、離せば?』
そう言われては、先輩に手をひかれるの、嫌いじゃないし。
むしろドキドキして苦しいけど嬉しいから、好き、だけどさ…
『離さないんだ?』
先輩は意地悪く微笑み、問いかける。
離せるわけない、離してしまったが最後、再び先輩に手を引かれるかは確実ではないんだから…。