この恋、きみ色に染めたなら
『……もう、いいです』
そう答えるのが精一杯な私はどれだけ先輩のことが好きなのよ!
『紗希、お前歩くの遅いし、いつも立ち止まるし、お前の所まで戻るの面倒くさいから一度離してもまた引くよ?』
……へ……?
思わず、心の声が口から出てしまったようで、それを聞いた先輩はクスクスと笑い始めた。
『…だから靴、履き替えてくれば?』
まだクスクスと笑っている先輩を私は見つめる。
見つめていたら、先輩の本音なんか分かったりしないかな…
本当に手を引いて歩いてくれるつもりはあるのか…とか、分かったらいいのに。
そしたら安心して離せるんだけどな…
でも、残念。
私には分からないや…
“本当ですか”と聞いてしまおうかとも思った、けど聞かないことにした。
『……じゃ、靴、履き替えてきます』
私の言葉に、先輩は引いていた手の力を緩め、そして完全に離してくれた。