この恋、きみ色に染めたなら





私は紗季さん、なんだー…






わざわざ教室に迎えに来てくれのも、

小林君に教科書を返すように言ってくれたのも、

“特別な子”とか言うのも、



全部、全部、私が紗季さんの代わりだから、そうしてくれてるんだよね…












『なぁ……』




手が離れ、自分から“履き替えてくる”と言ったのに、その場から一ミリたりとも動けていない私に先輩は何かを言おうとしている。






私が先輩に視線を向けると、先輩は一度ため息を吐いた。






そして、






『俺、お前にお礼がしたくて誘ったんだ。

 別に紗季の代わりで放課後を潰そうとしてるわけじゃない、から…』






先輩はそう言って、自分の靴と上履きを入れ替え、そして靴をタイルに放った。











『………先輩…?』








『確かに俺は紗季を忘れた日は無いし、紗季を想ってるって言った。

 けど紗季とお前を重ねるつもりなんかない、紗季は紗季、お前はお前のつもりだから』








先輩のその言葉の後に流れる沈黙の時間ー…







紗季さんの代わりにさえなれない私は、



先輩の絵のモデルをという役さえ終わってしまった私は、



一体、先輩にとってどんな存在になるって言うんだろう…?











『……そう、ですよね……。

 ただの後輩が紗季さんの代わりになんてなれないですよね……』






おかしいな……



自分で発してる言葉なのに、どうしてこんなにも胸が痛いんだろうー…





チクチクという痛みが、いつの間にか喉の奥の方を熱くさせていくー…








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