この恋、きみ色に染めたなら
靴に履き替え、先ほどの場所へと戻ると、先輩は既に玄関のガラス戸にもたれかかれようにして立っていた。
ただもたれかかれようにして立っているだけなのに、私の心を奪う-…
最初から先輩は格好良かった。
“氷の美男子”とか言われるくらいに。
沢山の女の子にキャーキャー騒がれる、そんな人。
沢山の女の子を虜にしてしまう、夢中にさせてしまう人。
そんな人とこうして放課後を過ごせることはどんなに幸せだろうか。
例え、それが恋人という間柄でなくとも、それでもどれだけ幸せなことだろう。
『紗希、遅い』
先輩は私に気がつき、そう声をかける。
呆れたように私を見つめる、その瞳に私がいることがすごく嬉しい。
こんな風に名前を呼ばれたり、見つめてもらえる、こんな瞬間が本当に嬉しい。
『…す、すみません………』
私は幸せを感じながらも、小走りで先輩の元へと駆け寄る。