この恋、きみ色に染めたなら
『紗希って、実は狙ってんの?』
先輩の狙ってる発言に私は首を傾げる。
何を狙ってる……?
『遅いのとか、トロいのとか嫌いって何度も言ってんじゃん。
けど、紗希はいつも俺に何か言われるまでボケーッと突っ立てるだけだし…』
先輩はそう言うと、ガラス戸から背を離し、真っ直ぐと私の元へと歩いてくる。
『こうされんの、待ってるわけ、紗希は…』
先輩はすっと伸ばした細長い指で私の手首を掴む。
『……ち、ちが』
『前から思ってたんだけど、紗希、細過ぎ。
もっとしっかり栄養、摂った方がいいと思うけど』
言いかけた言葉を遮り、先輩は掴んだ手首を引く。
いつもの先輩の背中。
無駄な肉なんてどこにもない、スラッとした細長い身体を真後ろから見つめる-…
この後ろ姿が好き-…
私はこの後ろ姿を見るのが大好き。
だからきっと私はいつも立ち止まるのかもしれない。
立ち止まれば先輩は私の手を引き、そして大好きなこの後ろ姿を見つめることが出来るから。
けど。
私は先輩の後ろ姿を見つめることで満足出来ない-…
出来れば先輩の真横を歩きたい-…