この恋、きみ色に染めたなら
『……あの』
『隣を歩きたいんだろ?
だったら早く来いよ。
来ないなら俺は先に行く』
先輩はそう言って手も引いてくれずにスタスタと歩いていってしまった。
いつもなら立ち止まる私を先輩が迎えに来てくれるんだけれど。
今日は隣を歩いてもいいお許しが出たし、私から行ってみよう。
『……先輩…!』
言い終わるのと走り出すの、どちらの方が早かっただろう…
どちらが先で、どちらの方が早かったとか分からない位、それは同時だったかもしれない。
私の呼びかけに先輩は面倒くさせそうに振り向く。
『…待ってください…!』
私の声を聞いて、立ち止まる先輩。
私はそんな先輩の元へと近付く。
『相変わらず紗希は遅いわ…』
先輩はそう言って、でもちょっと優しい顔で微笑んでくれた。