この恋、きみ色に染めたなら
追いついた私に、先輩は首を傾げた。
『紗希は変わってる。
俺みたいな奴の隣を歩きたいとか、必死で走ってくるとことか…本当に変な女だよな…』
好きな人の隣を歩きたいと思うこと、
好きな人の隣に向かって走ること、
それってなんかおかしいのかな…
『好きな人の隣は絶対に歩きたいですよ?
隣で歩いたら先輩と同じ景色を見れるじゃないですか!
同じものを見て、同じものを聞いて、同じように感じることができたら、すっごい幸せだと思うんです!
だから私は先輩の隣を歩きたいと思うんです』
同じものを見て、
同じものを聞いて、
同じものに触れて、
同じように感じることができたら、
もっと先輩を好きになれる気がするの。
もっと先輩を理解出来る気がするんだ。
『本当に紗希は真っ直ぐなのな……』
そう言い終えた先輩の顔が少しだけ歪んだように見えた、そんな気がした…。
『……先輩……?』
『いや、俺には勿体ないと思ったんだよ』
『…え……?』
『なんでもない』
今の言葉の意味を尋ねたかったけど、
なんでもない、そう言われてしまうと聞き出しにくくて…
私は再度、先輩に尋ねることはしなかった-…