この恋、きみ色に染めたなら
『……は!先輩!私、私がお金出します!』
私は先輩から手を離し、鞄からお財布を取り出す。
お財布の中からお金を出そうとすると先輩がその手を制止した。
『今日はお前のお礼のつもりだから。
それに俺は後輩にお金を出させようとか嫌なの』
そう言って先輩は自分のお財布から二人分のお金を出し、スタッフの人に手渡した。
『……でも……私がこの映画を観たいとか言ったのが始まりだし……』
『俺は男が出すって言ってる時に甘えてくれる女がいい』
………先輩はそう言うけど…。
でも、いいのかな……?
彼氏彼女っていう訳でもないし……
ただ、私の好きな人っていうだけなのに、お金出してもらうとか……
『紗希、なんか不満?』
『……なんか申し訳なくて………』
私がそう答えると、先輩はクスって笑って、
『紗希が申し訳ないとか思う必要、全くないんだけど。
もし紗希がそう思っちゃうなら、俺、アイスコーヒーが飲みたい』
………そう言った。
アイスコーヒー…?
ふとチケット売り場の隣にある、飲み物やポップコーンが買えるところに目が行く。
あそこならアイスコーヒーが買える……
『分かりました!アイスコーヒー買ってきます!』
先輩、私がチケット代を出してもらうのに申し訳ないって言ったから。
きっと気を利かせて飲み物が飲みたいって言ってくれたんだ……
私は先輩から離れ、飲み物を買いに行く。
よし、アイスコーヒーだけじゃ申し訳ないし、ポップコーンも買っていこう。