この恋、きみ色に染めたなら







『ご注文をどうぞ』




映画館のスタッフの人に声を掛けられ、私はアイスコーヒー、アイスティー、そして王道の塩味のポップコーンを注文した。







『ご注文を繰り返させて頂きます、アイスコーヒー、アイスティーがお一つずつ、塩味のポップコーンがお一つで宜しかったでしょうか。合計で1300円になります』





スタッフの人に言われた金額を私はお財布からお金を出して支払った。








『1300円ちょうどのお預かりでしたのでレシートをどうぞ。出来上がるまで一歩右側にお並びになってお待ちください』





映画館のスタッフの人はそれだけ言い、後ろの棚から飲みものなどの準備をし始めた。












『…あれ、紗希ちゃん…?』




一歩右側にずれたところで、私は聞き覚えのない声に反応し、声のした方へと振り返った。








そこには“炎の美男子”こと山科先輩がクラスの人なのか、それともサッカー部の人なのか、誰かは分からないけど何人かと一緒に立っていた。











『……山科先輩……』






私がそう声をかけると、山科先輩はニコッと微笑む。









『紗希ちゃんに名前を覚えててもらえるなんて光栄です』







名前を覚えるも何も…



山科先輩も成田先輩やヒロと同じくらい、有名なお方ですから、知らないってことはまずない。









『紗希ちゃんも映画を観に来てたんだね。

 俺も、今日は久々のOFF日だからサッカー部の奴らと一緒に映画を観に来たんだ』






優しく、ふんわりと包んでくれそうな、その笑い方に不覚にもドキッとするー…







そりゃ…“炎の美男子”こと、あの山科先輩だもの…



ドキッとしてしまってもおかしくはない話だー…








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