この恋、きみ色に染めたなら
唇が震える。
指が震える。
その震えは体全体を蝕み、そして体全体で震えだす。
『俺は紗希のこと、そんな顔しかさせられない。
紗希には……紗希をもっといい顔にさせてくれる男は他にいる。
だから、考え直せ、な?』
先輩の目がいつもより真剣で、
先輩の目がいつもより本気だったー…
『……私が先輩を想ってると…迷惑……ですか……?』
顎に添えられていた指が離れ、先輩は私から視線を反らした。
数秒の間があって、先輩は小さな声で、でもしっかりと“あぁ”と答えたー…
目も合わせてくれないー…
そっか……やっぱり先輩にとって……私の想いは迷惑、だよね……
だって、先輩は紗季さんのことが好き、なんだからー…
『……ですよね。先輩は紗季さんのことが……好き……なんですもんね……。
紗季さん以外の気持ちなんて…迷惑ですよね………。
すみません……私、先輩のことなんて何も考えてない奴で………』
前髪に手を添えて、今にも涙が溢れだしそうな顔を先輩に見せないようにする。
きっと、ここで泣かれても先輩を困らせるだけで、迷惑にしかすぎない……